本文へジャンプ

東京都書店商業組合青年部へようこそ♪

青年部長からごあいさつ

東京都書店商業組合青年部会長就任にあたって


 本屋は儲からない。売り上げが約二十年連続で前年割れの書店業は、正社員を雇うこともできず、パートやアルバイトでなんとか切り盛りしているが、最低賃金が急激に上がり、経営の逼迫は続いている。店を開けていても赤字で、図書館への納品や教科書の販売等で赤字を補填し、何とか凌いでいる店がほとんどだ。書店の利益は1%と言われ、政府が進めるキャッシュレスの推進により、手数料として約3%が持って行かれると、粗利を優遇されているナショナルチェーンですら赤字に転落するのは必至だ。町の本屋の多くは、他に不動産収入がある所が赤字を補填し、ボランティア状態で経営を続けているのが実態で、子どもに本屋を継がせることを考えている経営者などほとんどいない。これであと何年この業界が存続できるのだろう。

 本屋は多様な思想、価値観に出会える場だ。ネットで手にする情報は、自分が見聞きしたい情報に偏ってしまいがちで、嫌なことや都合の悪いことに耳を塞ぎ、フェイクだと主張する政治家が我が物顔で跋扈するように、一部の情報がバズるということになる。日本は戦中の言論統制への反省のもと、戦後、世界に誇る出版文化を醸成してきたはずだが、今や、出版物にもヘイト主張を繰り広げるものが増えてきた。これもネット社会の弊害なのだろうか。それでも本屋は右から左まで多様な主義主張を店頭に並べ、社会の今を反映している。公共図書館がその役割を担うことは難しいだろう。

 出版業界の存続には若者が安心して就職し、他に引けをとらない収入を得られることが必要だ。息も絶え絶えに生き残った我々だけではもう業界を守ることはできない。少なくとも東京の各駅に1店舗の書店がある社会を実現することが、業界のプラス成長への出発点となるはずだが、そのためには、若者がチャレンジする価値を見いだせる、新規開業が可能な業界に変革されなければならない。
 業界が生き残るための改革に残された時間は極めて少ない。もしかしたら一度死に絶えることが必要なのかもしれない。それでも生き残ろうとする町の書店に足を運んでいただき、新たな知識への出会いの場としていただけたら幸いだ。


第16代会長 田中久隆


先先先先先代の部長の挨拶はこちら
先先先先代の部長の挨拶はこちら
先先先代の部長の挨拶はこちら
先先代の部長の挨拶はこちら
先代の部長の挨拶はこちら